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独り占めしたい宇佐美、残したい宇佐美

爽やかなブルーの外壁に木製のドア。ステンドグラスの小窓が、来る人をささやかな非日常へと誘ってくれる。

今回インタビューのためにお邪魔したのは、カフェ川口屋。明るくエネルギッシュな店主の友美(ともみ)さんが迎えてくれた。移住者の中にはこのお店を介して地域と関わりやすくなる人がいるというが、それも納得だ。

温もりのあるインテリアが置かれた店内には、心地よくゆったりとした時間が流れている。集う人が時間を気にせず話し込める場所がある。そんな安心感を宇佐美に与えているような気がした。

今回インタビューをするのは、川口屋の店主の川口友美(かわぐちともみ)さん、民宿・海風荘の代表の山岸涼子(やまぎしりょうこ)さん、ミュージシャンの小島大介(おしまだいすけ)さんの3人。宇佐美の魅力から展望までたっぷりと語ってくれた。

宇佐美の魅力

三人に宇佐美の魅力を尋ねると、答えはすぐ返ってきた。

気候の良さだね、と答えるミュージシャンの大介さんも、宇佐美の心地よい自然に惹かれてやってきた移住者の一人だ。

アメリカにも移住した経験のある大介さんが言うには、宇佐美の気候はカリフォルニアやハワイにも匹敵するそうだ。実際、数々の移住者をサポートしてきた友美さんも、良い気候を求めて移住してきたという声を聞いたことがあるという。

豊かな自然に囲まれることのできる贅沢さは何にも代えがたい。

一方で、観光業者として葛藤を感じることもあるとUターン経験者の涼子さん。

(海風荘の同業である)観光業に携わる人が減っていく現状に、もどかしい思いもある、と。

悩む三人の姿が、印象的に私の目に映った。

独り占めしたいまち

豊かな自然を、静かにたっぷりと浴びるのは心地がいい。

けれどこの魅力は一日二日の滞在では伝わらないし、かといって観光客で溢れかえるまちは住民も受け入れがたい。

中長期滞在で紹介したい素敵なスポットはいっぱいある、と涼子さんが教えてくれた。巣雲山とかいいよね、と大介さんも相槌を打つ。

宇佐美には、独り占めしたいと思えるほどの心地よさがある。

東京から近く、気軽に行ける宇佐美。この自然の心地よさを存分に楽しむために、ゆったり時間をかけて過ごしたい。

もったいない!宇佐美

子育てしやすいまちなのに、働く場所がない。もったいない!とエネルギッシュに語ってくれたのは、川口屋店主の友美さん。

たっぷりの自然がある宇佐美は、たしかに子育てにぴったりの環境だ。

以前は、子どもたちの多くが伊東の県立高校に進学し、宇佐美で就職をしていたそうだ。しかし観光業や漁業が衰退した今、その子どもたちが帰ってきても就く仕事がないという。

子どもが戻ってこれるまち、戻りたいと思えるようなまちにしてこなかったことは、宇佐美の反省かな、と友美さんは言った。

宇佐美に欲しいもの

宇佐美の魅力も課題もたっぷりと語ってくださった3人に、こんな質問をしてみた。

宇佐美にあったらいいな、ほしいと思うものはありますか?

真っ先に答えてくれたのは涼子さんだった。朝からやっている喫茶店、モーニングを食べられるところがほしいと言う。昔駅前にあった朝8時開店の喫茶店サンは、お父さんたちの溜まり場だったらしい。

それ僕やりたいな、と大介さん。

これに対して、場所と人がマッチングするようなものがほしいね、と答えたのは友美さん。

喫茶店も、誰か一人が担うことは今この町で難しい。だから、やりたい人がどうやったらできるかをみんなで話し合って、もっと飲食店を増やしたい。飲食店は情報交換の場だからね、と。

大介さんがほしいのは、働き口。午前は海風荘で働いているというが、午後の働き先を探すとき、宇佐美で働くことの良さを感じたらしい。隣まちで知らない人に雇われるよりも、宇佐美の知り合いの元で働く方が安心できるからだ。

豊かな自然の中で、自分たちの生業やコミュニティを守っていこう、子どもたちのためにも。そんな、あふれるほどの気概を感じさせられるインタビューだった。

(2023年12月5日取材 稲垣寧々花)

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ねねか

ねねか

まちや人のステキを伝えるWebライター

本Webマガジンの編集長で、中央大学でまちづくりを学んでいる大学4年生。実際のまちづくりに関わりながら、宇佐美の人やまちのステキを伝えるWebライターとしても活動しています。

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